遺言書に対する7つの誤解|「まだ早い」「縁起でもない」は本当?

遺言書に対する7つの誤解|「まだ早い」「縁起でもない」は本当?

遺言書は、ご本人が亡くなったときに初めて法的な効力が生じるものです。そのため、「まだ死ぬつもりはない」「遺言なんて縁起でもない」「今から遺言を作るなんて、死ねと言われているようで嫌だ」といった理由から、遺言書の作成に抵抗を感じる方も少なくありません。しかし、遺言書は決して「死」を意識するためのものではなく、ご自身の意思を確実に残し、残されたご家族の負担や相続トラブルを防ぐための大切な備えです。

この記事では、遺言書に対してよくある誤解を紹介するとともに、それぞれの誤解について正しい考え方を分かりやすく解説していきます。

誤解① 遺言を書くのは縁起が悪い

遺言書は、自分が亡くなったときに初めて法的な効力が生じるものです。そのため、高齢者の中には、

  • 「まだ死ぬつもりはない」
  • 「私に早く死ねと言っているのか」

などと、遺言書の作成に抵抗感を示す方も少なくありません。
家族としても将来の相続トラブルを防ぐために勧めているだけであっても、「死」を連想させる話題である以上、切り出しにくいテーマであることは確かです。
しかし、遺言書は決して縁起の悪いものではありません。実際には、遺言書を作成することで得られるメリットも数多くあります。

メリット① 悩みや心配事が整理される

「自宅は誰に残そうか」「家族が揉めないだろうか」など、長年考えてきたことを遺言書やエンディングノートという形で整理することで、気持ちがすっきりし、精神的な安心感につながることがあります。

メリット② やり遂げたという達成感を得られる

遺言書を作成するには、自分の財産を整理し、誰に何を残すかを真剣に考えなければなりません。専門家に依頼する場合でも、打ち合わせを重ねながら内容を決めていくことになります。

時間をかけて完成した遺言書は、自分の人生を振り返り、最後の意思を形にした大切な一通となり、「やるべきことを終えた」という達成感を得られる方も少なくありません。

メリット③ 家族から感謝されることもある

遺言書があることで、相続手続きがスムーズに進み、相続人同士のトラブルを防げる可能性があります。

その結果、ご家族から

「おじいちゃんは、私たちのことまで考えて準備してくれていたんだね。」

と感謝されることもあるでしょう。
自分では「亡くなった後のことだから関係ない」と思われるかもしれません。しかし、遺言書は遺された家族への最後の思いやりともいえるものであり、ご家族にとって大きな財産になることも少なくありません。

誤解② まだ若いから必要ない

書き50代はもちろん、60代もまだ元気に過ごされている方が多く、「遺言書はまだ早い」と考える方も少なくありません。しかし、遺言書は決して高齢になってから作成するものではなく、心身ともに元気なうちに準備しておくことが大切です。
一般的に65歳以上は高齢者、75歳以上は後期高齢者とされています。75歳を超えると、体力や集中力の低下、病気や入院などにより、遺言書の作成そのものが負担になるケースもあります。
特に自筆証書遺言は、原則として遺言本文を自筆で作成しなければなりません。そのため、手が震えたり、長時間文字を書くことが難しくなったりすると、作成自体が大きな負担になる可能性があります。
また、認知機能が低下すると、遺言能力が問題となり、せっかく作成した遺言書が争いの原因になることもあります。
そのため、「まだ若いから必要ない」と考えるのではなく、50代や60代など、判断能力や体力に余裕のある時期に一度作成を検討しておくことをおすすめします。遺言書は後から何度でも書き直すことができるため、まずは現時点での意思を形にしておくことに大きな意味があります。

誤解③ 財産が少ないから遺言はいらない

「うちは財産が少ないから、遺言書なんて必要ない」と考える方は少なくありません。しかし、その認識は相続人全員が共有しているとは限りません。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。協議がまとまらなければ、最終的には家庭裁判所で遺産分割調停や審判によって解決を図ることになります。
家庭裁判所の司法統計によると、遺産分割事件の約3分の1は遺産総額が1,000万円以下となっています。つまり、必ずしも「財産が多い家庭だけが相続で揉める」わけではありません。
遺言者本人は「大した財産ではない」と思っていても、相続人にとっては決して少ない金額ではない場合があります。そのため、「財産が少ないから遺言書は不要」と考えるのは誤解といえるでしょう。

誤解④ 家族仲が良いから大丈夫

家族仲が良いからといって、「遺言書は必要ない」と考えるのは早計です。
人はどれだけ仲良く暮らしてきたとしても、お金が関わると考え方が変わってしまうことがあります。相続がきっかけで家族関係が悪化し、「相続」が「争族」になってしまうケースは決して珍しくありません。
人は利益を得ること以上に、損をすることに敏感だといわれています。そのため、数十万円程度の差であっても、「自分だけ取り分が少ない」と感じれば、不満を抱いてしまうことがあります。
一方で、被相続人が遺言書で明確に意思を示していれば、「おじいちゃんが考えた結果なら、その意思を尊重しよう」と受け止める相続人も少なくありません。もちろん、遺言書があればすべての争いを防げるわけではありませんが、遺産の分け方について被相続人の意思が明確になるため、相続人同士の対立を防ぐ効果が期待できます。

誤解⑤ 一度作ると変更できない・財産が使えない

遺言書の作成に抵抗を感じる方の中には、「一度遺言書を作成すると、その内容に縛られ、財産を自由に使ったり処分したりできなくなるのではないか」と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、そのような心配は不要です。

民法985条1項では、遺言は遺言者が死亡した時から効力を生じると定められています。また、民法1023条2項では、遺言の内容と抵触する生前処分などを行った場合には、その部分について遺言を撤回したものとみなされると規定されています。

つまり、遺言書を作成した後でも、遺言者は自分の財産を自由に使ったり、売却したり、贈与したりすることができます。また、遺言書の内容を変更したり、新たに作り直したりすることも自由です。
遺言書は、一度作成したら変更できないものではありません。その時々の家族構成や財産状況、考え方の変化に応じて見直すことができますので、作成後の財産の使い方まで心配する必要はありません。

誤解⑥ 作ったとたん冷たくなるかも

世の中にあるすべての家庭が円満とは限りません。中には、遺言書を書いてもらい、自分たちの相続が有利になると分かった途端、遺言者への態度が冷たくなったり、面倒を見なくなったりする家族がいる可能性もあります。
しかし、そのような場合でも心配する必要はありません。
誤解⑤でも解説したように、遺言は何度でも自由に撤回・変更することができます。仮に遺言書を作成した後、家族から冷遇されるようになった場合には、新たに遺言書を作成すれば、その新しい遺言書が優先されます。

誤解⑦ 遺言の内容が実現されるか不安

遺言は、単に相続財産を誰に承継させるかを決めるだけの制度ではありません。相続開始によって遺言の効力が生じ、その内容が実現されるまでが一連の流れです。

法律上有効な遺言書が作成されていれば、その内容に従って預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きが進められます。もちろん、相続人間で争いが生じる可能性はありますが、遺言書があることで財産の承継方法が明確になり、手続きを円滑に進めやすくなります。
また、遺言の内容をより確実かつスムーズに実現するためには、遺言執行者を指定しておくことをおすすめします。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を有しており、相続人の負担軽減や手続きの円滑化にもつながります。

遺言書は「書いて終わり」ではありません。その内容が確実に実現されることまで見据えて作成することが大切です。

まとめ

今回は、遺言書に対してよくある7つの誤解について解説しました。

「縁起が悪い」「まだ若いから必要ない」「財産が少ないから不要」といった考えから、遺言書の作成を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、遺言書は亡くなることを意識するためのものではなく、ご自身の意思を確実に残し、大切なご家族の負担や相続トラブルを軽減するための制度です。
また、遺言書は一度作成したら変更できないものではなく、財産状況や家族関係の変化に応じて何度でも見直すことができます。

遺言書は「まだ早い」と思っているうちに、病気や認知機能の低下などにより作成が難しくなってしまうこともあります。そのため、判断能力や体力に余裕のある今のうちから準備を始めることが大切です。

当事務所では、公正証書遺言・自筆証書遺言の作成サポートはもちろん、遺言執行者への就任にも対応しております。
ご自身やご家族が安心して将来を迎えられるよう、一人ひとりのご事情に合わせてお手伝いいたしますので、遺言書の作成をご検討の際はお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人 Wrote this article

rihito

rihito 行政書士 / 男性

立命館大学法学部卒。京都市・向日市を中心に活動する行政書士です。